下甲介粘膜焼灼術について

鼻炎によって生じた頑固な鼻閉に対し、今日では下甲介粘膜焼灼術と呼ばれる外来手術が広く行われるようになってきました。当院では平成8年より YAG と称されるレーザー機器を用いていましたが、今年から機種を アルゴンプラズマ凝固法(APC) に替えて焼灼術を行っています。今回このAPC法について解説いたします。

鼻の構造

 術式を説明する前に鼻の解剖を図によって説明しましょう。鼻の中は図1のようになっています。前鼻孔から入った吸気は下甲介と呼ばれる突起の周囲を流れ、後鼻孔を通り咽頭、喉頭を経て肺に入ります。鼻炎による鼻づまりは主にこの下甲介の粘膜が腫脹して吸気路を狭くした結果生じるのです。

手術の原理

 この焼灼術の原理は、腫脹肥大した下甲介粘膜を焼灼し変性させることにより分泌機能や血管拡張作用が低下し、かつ粘膜表面が瘢痕化(硬い組織に置き換わる)することによって膨張が抑えられ、それで鼻づまりが改善されるということです。かつてはこの焼灼に炭酸ガス、半導体、YAGといった種類のレーザーが主に用いられましたが、最近ではラジオ波、超音波、アルゴンプラズマなどを利用した技術も応用され、それに伴い術式名も下甲介レーザー手術から下甲介粘膜焼灼術へと総称するようになりました。

アルゴンプラズマ凝固法(APC)とは

 高周波電流とアルゴンガスを同時に流すとガスは伝導性を帯びそれを組織凝固に応用したのが本法です(図2)。エネルギー源がレーザーとは違いますが、表面を焼灼するという原則は同じです。本法の利点は鼻内に挿入する端子が細いために下甲介の後方まで操作が容易であるという点です。頑固な鼻閉の多くは下甲介後方の腫脹が強いためそこをしっかり焼灼する必要があるのですが、これは非常に重要なことです。図3は器械の本体で手に持っているのが端子です。

 

APCの手技

 麻酔は局所麻酔薬を浸した小ガーゼを下甲介周囲に挿入し30分待てば充分です。
手術は外来治療と同じ座って行います。APCのガスと電流の出る端子を鼻内に挿入し、ファイバーを使って局所を観察しながら焼灼を進めますが(図4)、両側行って15分程度で終了します。術中は歯の神経が刺激されるようなピリピリ感がありますがたいしたことはありません。どうしてもその刺激が不快であれば、ソフト凝固といって電流のみで刺激なく対処する方法もあります。ソフト凝固とは当院の器械に設置されている単極のボール電極による凝固方法(図5)で、やや深い層まで変性させる時に用いますが、接触時間を短くすればAPCとおなじ効果が得られます。更に粘膜の腫脹が削らなければいけないほど強い時はループ電極によるドライカット(当院の装置に付属する出血の少ない電気メスー図6)を用います。また術中の出血はほとんどありません。
 術後は焼灼した部分にカサブタがつきますので一時的に鼻づまりは強くなりますが、一週後の診察時にカサブタを吸引すると改善されます。その後は人によって小さなカサブタが着いたり剥がれたりしますが、3週間で創面は落ち着きます。

  

適応について

慢性化した鼻炎や花粉症の予防に対しAPCなどの焼灼術を応用するのに、まずは専門医に相談することが大切です。今日では焼灼術自体は技術的には大げさではないのですが、最も重要なことはまずは話を伺い鼻内を観察してきちんと適応があるか否かを判定することです。適応を決めるには次の点が目安となります。

鼻炎のタイプ(くしゃみ型・鼻漏型・鼻閉型)
鼻炎の原因となるアレルゲン検査の結果
これまで内服した抗アレルギー剤の効果
点鼻薬の効果
蓄膿症が合併してないか
鼻中隔彎曲など鼻内の骨形態の影響
年齢・全身状態・常用内服薬
理解度

費用について

 下甲介粘膜焼灼術は健康保険が適用されています。
自己負担3割の方が初診当日に両側鼻腔を手術したとすると(院外処方)

焼灼術(片側)9050円×2= 18100 円に
初診料・ファイバースコープ検査・鼻腔通気度検査・処方箋料の
2740 + 3000 + 6200 + 690=12630円を足して 計30730円

3割負担のため自己負担金(窓口支払い)は 9220円 です。(薬代は別途)

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